米国特許で仮出願を使うと特許期間が最長12ヶ月延びる

米国特許の仮出願(Provisional Application)という制度をご存知でしょうか。先日、無効資料調査の対象特許が仮出願に基づく通常出願の案件でした。無効化資料を探すにあたって、基準日が出願日であるのか、それとも仮出願日であるのか、が不確かでしたので、仮出願について調べてみました。本記事では、仮出願制度の趣旨、および、仮出願のメリットについてご紹介しています。

目次

仮出願とは? 1年以内に正規の出願をすることを前提に仮にする出願のこと

仮出願(Provisional Application)とは、その後に通常の出願をする事を前提にして仮にする出願のことです。仮出願はUSPTOで審査されることはないため、仮出願した発明を権利化するためには仮出願から12ヶ月以内に、仮出願に基づく通常の出願をしなければなりません。

仮出願の際には、明細書を提出しなければなりませんが、明細書にクレームを記載する必要は無く、また、図面を提出する必要もありません。また、英語に翻訳することなく日本語で出願することもできます。

なお、仮出願かどうかを確認する方法ですが、特許公報の書誌事項が記載されている箇所に (60) Provisional Application No.nn/nnn.nnn のように記載されていますので、興味がある方は確認してみてください。

仮出願制度の趣旨は日本の国内優先権制度と同じような考えです

アメリカを第一国として出願した場合の特許権の存続期間は、出願日から20年で満了します。一方でパリ条約の優先権を主張してアメリカへ出願する外国人は、第一国出願日の利益を受けながらアメリカへの出願日から20年間の権利期間を享受できます。

このようにすると、第一国をアメリカとした出願は、特許権の存続期間において外国人の出願よりも短期間になる、という不利益を被るので、パリ条約の優先権を伴った出願と同等の利益を受けることができるように、仮出願制度が制定された。ということです。

仮出願をすることによって得られる効果

仮出願の出願日から12ヶ月以内に、仮出願による優先的利益を主張して正規出願を行い、特許権が付与された場合には、その特許権の存続期間はその正規出願の出願日から起算されることになります。即ち、特許権の存続期間が実質的に最長12ヶ月伸びることになります(仮出願日から出願日までの最長12ヶ月)。

なお、新規性など特許性の判断においては、仮出願日に出願したのと同様の取り扱いが受けられます。

無効資料は仮出願日以前に公開されている文献であることが必要

以上でお分かりのように、無効化する対象の特許が仮出願に基づく優先権を主張している場合は、仮出願日以前に公開されている文献を探す必要があるというわけですね。


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