先行文献調査の手順

「先行文献調査」をご存知でしょうか? 研究・技術者(発明者)にとって最も身近な特許調査になります。「出願前調査」とも呼ばれ、特許出願が簡単に拒絶されないように、同じ発明が出願されていないか否かをあらかじめ調べるために行われる特許調査です。

本記事では、この先行文献調査の手順について私の経験をもとに記載しています。

目次

最初に発明開示書を読んで発明内容を把握する

調査対象の母集団を作成するために検索式を設計しなければなりません。そのためには、まず発明内容を十分に理解する必要があります。

先行文献調査の仕事を受ける際に、発明者から発明内容について説明を受けたり、或いは、発明提案書/発明開示書など発明のアイデアを記載した資料の提供を受けることが一般的です。

理想的には、発明開示書を読んだうえで理解が不十分なところを明らかにした状態で、発明者から説明を受ける場(ヒヤリングの機会)を設けると良いと思います。

発明提案書を読み込む際のポイントとしては、この発明が属する技術分野は何なのか?例えば、インクジェットプリンタに関係する技術なのか?人工知能に関する技術なのか?医療機器に関するものなのか?さらには、X線診断装置なのか?超音波診断装置なのか?CT装置なのか?など、どの技術分野に属する発明なのかを見定めます。

発明開示書から、この発明の本質部分はどこか?を読み取ることは大事ですが、従来どのような技術的課題があって、本発明の解決手段がどのようなものなのか、発明の技術的背景について理解を深めることも大事になります。

発明が関係する特許分類を選定する

発明の理解が進んだところで、関係する特許分類を選定します。特許分類は、特許情報プラットフォーム J-PlatPatの特許・実用新案分類照会(PMGS)が便利です。分類の説明書きを確認して特許分類を選定すると良いと思います。

なお、特許分類は「IPC」「FI」「Fターム」についてそれぞれ選定しますが、FI分類に対応するFターム(テーマコード)が表示されていますので参考にしてください。

なお、特許分類を選ぶ際のコツですが、私の場合はあまり下位階層の分類(例えばFタームの細かい分類)は選ばず、上位の階層を選ぶようにしています。具体例では、IPCの場合は H01S3/00(メイングループ)か、細かくてもH01S3/14(サブグループ)を選定します。

キーワードの選定

特許分類の選定の次にキーワードの選定を行います。このキーワードの選定が検索の効率にとって最も重要だと思います。

キーワードは、発明者が提示した発明開示書で使われている用語を抽出することがまず第一に行うべきことです。次に、それぞれの用語についての同義語を調べます。例えば「センサ」だったら、「検出手段」「検知手段」・・などです。また、具体的な用語に落とし込んでも良いです。例えば「センサ」なら、「温度センサ」「圧力センサ」「加速度センサ」・・・などです。

また、技術用語は「企業ごとの方言」があるので注意が必要です。例えば、「プリンタ」を「画像形成装置」「画像記録装置」・・・などです。これらの方言を見つけるには、特許分類とキーワードを使って予備検索(お試しの検索)を行って、各出願人の明細書をザっと読むことで気づくことができる場合もあります。

近傍検索を使い倒す

近傍検索(近接検索とも言う)は、2つのキーワードの間隔を指定して検索をすることです。例えば、「無電源」というキーワードと「発光」というキーワードの間が○文字以内にあるものを検索することができます。

近傍検索の書式は検索ツールによって異なりますが、「Sharerearch」の場合は、(無電源)adj5(発光)、とか(無電源)adj50(発光)などと記載します。前者がキーワードの間隔が5文字以内の場合ヒットし、後者の場合は50文字以内の場合にヒットするというものです。

これらの近傍検索を使えば、明細書の一つのセンテンスの中に2つのキーワードが50文字以内の間隔で存在しているものを抽出したい場合に便利に使えます。

検索

以上のように選定した特許分類とキーワードを組み合わせて、具体的には論理積と論理和を組み合わせて、複数の集合を作り(例えば集合A・B・C)、それらの集合の論理和を取って調査対象の集合を決定します。

出願しようとする発明は基本的にユニーク(新規性・進歩性がある)ものなので、各集合(A・B・C)の論理積を取ると、ヒット件数は非常に少ないか、ゼロ件であることがままあります。

そのため、各集合の論理和を組み合わせ(A+B+C または A×B+C)て、発明の構成要素の一部が含まれる集合を作ると、検索漏れも少なく、かつ、複数の文献を組み合わせることで進歩性を否定可能な先行文献を見つけることができます。

結論から言うと、検索結果が300件~600件になる様に検索式を工夫します。検索母集団が大きければ検索漏れのリスクが小さくなりますが、使える先行文献を探し出すために長時間を要し、効率が良くありません。逆に、50件程度の小さな母集合で、発明に関連する先行文献が見つからなかった場合には、再度検索式を作り直さざるを得なくなることも考えられます。

あくまでも気の持ちようですが、「300件~600件の集合の中に使える先行文献が見つけられなかった場合は、発明に近い先行文献は無いんだ!」と腹をくくれます。

査読して使える先行文献を抽出する

先行文献調査において「査読」に最も時間が掛かります。

あくまで私のやり方ですが、300件~600件の文献を、発行日の新しい順に斜め読みして、発明に関連していそうな先行文献をスクリーニングします。具体的には、引用文献に使えそうな文献は◎印、関連がありそうな文献は○印、とりあえず残しておきたい文献は△印、使えない文献は×印と、4つに分類します。当然、×印が殆どです。

次に、◎印の文献から精読して吟味します。良い文献が無ければ○印の文献、それでもなければ△印の文献という風に検討を進めます。使えそうな文献が4~5件ほど見つかったら先行文献の査読・選定は終了です。

最後に、選定した先行文献に基づいて、発明の新規性・進歩性が否定されるおそれがあるか否かを評価した調査報告書を作成して、先行文献調査を終了します。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

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