コロナウィルス・ワクチン特許権の一時放棄に関する賛否両論

最近、新型コロナワクチン特許の一時放棄について、支持派と反対派の主張がニュースになっていますね。日本は日本政府としての賛否を明確にしていないようです。

最近の話題では、感染力の強いデルタ株に対応するために3回目のワクチン接種(ブースター接種)を開始している国もあるようです。このように富める国々の中には国内の人々を対象にした追加接種を進めている国もある一方で、アフリカ等発展途上国に暮らす人々の大半は1回目のワクチン接種すら受けられていない状況にあるようです。

豊かな国々がワクチンを確保する一方で貧しい国々が取り残されており、コロナ禍は国間で二極化を見せつつあります。特許権が一時放棄されたからと言って、すぐにワクチンが作れるようになるわけでもないようですが、本記事では「コロナワクチンの特許権の一時放棄」について考えてみました。

新型コロナワクチン特許権の一時放棄について賛否両論

報道では、米国のバイデン政権が新型コロナウイルスワクチン特許の一時放棄を支持すると表明しました。国際社会でも、特許の一時放棄を支持する声が高まっています。

新型コロナワクチン特許の一時放棄によりワクチンの製造の拡大が期待できるというもので、公共の利益のために認められるべきものと考えます。

一方でファイザーなどの製薬各社では、特許の一時放棄がワクチン供給不足の解消にはつながらないと反対しています。その理由として、ワクチン生産は複雑であるため、特許を開放するだけではワクチンの増産にはつながらないと主張しています。コロナワクチン生産拡大のボトルネックは特許ではなく、ワクチンを入れる瓶や原料がないことであるとも言われています。

莫大な投資を行って新型コロナワクチンを製造している立場ですから、特許の一時放棄に反対することは理解できないことはありません。

特許権の一時放棄の法的側面は?

新型コロナワクチン特許を一時放棄すべきであるという主張は、「強制実施権」という制度に基づくものと考えられます。つまり、特許は公共の利益のために自由に実施することができるというものです。

この強制実施権はTRIPS協定の第31条に、一定の要件を充足した場合には、特許権者の意思に反しても強制的に実施許諾を与えることができるということが定められています。

製薬会社は、特許を一時放棄して実施許諾を与えても、特許以外の要因があるためワクチンの増産にはつながらないといっているわけですが、特許権の実施許諾と複雑な製造工程/原料の調達難とは別の話ですから、公共の利益のために特許の一時放棄をすべきものと思います。

また、今回特許の一時放棄を認めると、今後のワクチン開発や新薬開発の意欲(莫大な投資を必要とする開発)に影響するから一時放棄すべきではないという論調もあります。しかし、今の世界的なパンデミック状況で強制実施権を認めないならば、いつ強制実施権が認められるのでしょうか? 今こそ認められるべきであると個人的には考えます。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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