何歳まで働くか 長生きリスクに備える WPP戦略とは?

WPPという用語をご存知でしょうか? 「働けるうちは長く働き(Work longer)、私的年金(Private pension)で中継ぎし、最後は公的年金(Public pension)で締める」の頭文字を採ってWPPです。

人生100年時代と言われている昨今ですが、万一100歳以上まで長生きしてしまったら、それまでどうやって生活を繋いでいけば良いのでしょうか。WPPは想定していた以上に長生きしてしまった場合の、最後まで生活資金が枯渇しないようにするための戦略と言えます。

本記事では、このWPP戦略についてご紹介しています。近い将来に定年退職される方は、ご自身のライフプランを検討されるうえで、WPP戦略を考えてみては如何でしょうか。

目次

WPPとは Work longer, Private pension, Public pension の 頭文字

WPPとは、「働けるうちは長く働く(Work longer)、私的年金(Private pension)が中継ぎし、最後は公的年金(Public pension)で締める」この頭文字を採ったものです。WPPは欧米発の理論なのかと思ったのですが、第一生命の谷内さんという方が考案された日本発の考え方なのですね。

WPPの発想はプロ野球の『 JFK 』がヒントになったそうです。つまり、JFKとは、岡田彰布監督時代の阪神タイガースにおける、ジェフ・ウィリアムス(J)藤川球児(F)久保田智之(K)の3人のリリーフ投手の組み合わせを指す用語で、リリーフ投手の必勝継投パターンのことです。

そこから読み取れるのは、先発で出来るだけ永く働き(Work longer)、貯蓄や企業年金などの私的年金(Private pension)で中継ぎして、厚生年金などの公的年金(Publlic pension)で抑える(逃げ切る)、必勝パターンということですね。旨い事考えるなぁと思います。

公的年金の位置づけは『長生きした場合の保険!』

WPPの基本的な考え方は、公的年金の受給開始年齢を無理のない範囲で繰り下げて、年金の増額を図る考え方と言えます。

一昔前までは、60歳で定年退職したら、基礎年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)と企業年金(3階部分)で生活を繋いでいくというパターンが主流でした。しかし、現在では年金受給開始年齢は基本的に65歳になりましたので、60歳で退職後も65歳まで再雇用で働き、65歳でリタイアして公的年金と企業年金で生活するというのが主な流れではないでしょうか。

しかし、果たして65歳から公的年金を受け取ることを既定路線として、年金の繰り下げについては検討しなくても良いのでしょうか。確かに今までは年金の受給開始年齢を繰り下げる人は全体の1.5%と殆どありませんでした。しかし、現実として65歳以上でも働いている方はたくさんおられます。また、年金を繰り下げると年金額が増額され、仮に70歳まで繰り下げると42%も増額されるなどと盛んに喧伝されています。

一例で言えば、65歳から受給する場合の年金額が16.7万円(男子の場合の平均受給月額)として、これを2年間繰り下げて67歳0ヶ月から受給する場合は、16.8%増額の月額19.5万円(2.8万円の増額)になります。もちろん、税金や社会保険料が上がるため、手取りはそんなに増えませんが、一生涯この金額が受け取れるのは大きいです。

年金の支給開始年齢を検討する場合に考えることは、『これまで年金保険料を払い続けてきたのだから、生きているうちに早く回収したい』という考えがあると思います。その考えに立てば、繰り下げという選択肢はないわけですね。しかし、想定外に長生きしてしまった時の 保険 として考えれば、増額された年金額が一生涯続くという繰り下げ受給という仕組みは大変魅力的な選択肢と思われます。

65歳以降もいくらかの収入を得+私的年金+貯えで繋ぎ、無理のない範囲で受給開始を繰り下げる

第一生命の谷内さんが作成された資料が非常に分かりやすいので引用させていただきました。引用元はこちら。

第一生命 谷内さんの資料から

2022年4月から、法改正によって年金の「繰り下げ受給」の年齢が最長で75歳になります。75歳まで繰り下げれば、最大で84%の増額になります。しかし、70歳を超えて繰り下げるのは、代々長寿の家系の方以外は回収できないで終わる可能性が高いので、繰り下げるとしても70歳がMaxであると個人的には考えます。

上図のように、今や再雇用などで65歳まで働くのが一般的ですから、65歳から70歳までの5年間の生活をどうやって繋ぐかということになります。例えばアルバイトなどで週に3日程度働いて10万円位の収入を得て、それに貯えや退職金(企業年金)で補って、公的年金を受け取らずに生活する算段を考えてみてはどうでしょうか。

とりあえず70歳受給開始を目標に繰り下げをやってみて、気力/体力的・経済的に「もういいかな?」というときになったら、その時に年金の受給手続きすればよいと思います。それが、67歳でも68歳でも軌道修正すればよいのです。それでも繰り下げた分の年金増額というメリットが得られます。

一旦65歳で受給手続きをして受給を開始すると、もう繰り下げは認められません。繰り下げによる生涯にわたる年金増額という権利を放棄することになりますので、65歳になる前によ~く考えることが大事だと思います。

年金の繰り下げで注意すべきこと三つ

年金繰り下げは良いことばかりではなくて、注意しなければならないことが三つあります。

一つ目は、繰り下げで年金額が増えると、税金(所得税・住民税)と社会保険料(国民健康保険料・介護保険料)も増えるため、手取り額が思ったほど増えないということがあります。

二つ目は、夫婦の年齢差によっては、年下の妻がいるときに受け取ることができる「加給年金」が受け取れない期間が生じることに注意する必要があります。配偶者(妻)との年齢差などケースバイケースなので、ご自身の場合に当て嵌めて、シミュレーションしてみると良いでしょう。

三つ目は、繰り下げによって年金が増額された場合でも、遺族年金には影響しない(遺族年金が多くもらえることはない)ということです。配偶者(妻)のために少しでも多くの遺族年金を遺したい、と考えても繰り下げ受給の効果は得られないということです。これは注意が必要ですね。繰り上げ/繰り下げ受給と遺族年金の関係はこちらを参照

ともかく、65歳の誕生日の3ヵ月前に届く「年金請求書(事前送付用)」を前にして、思考停止状態でそのまま手続きしないほうが良いと思います。繰り下げ受給のメリット/デメリットを検討をしたうえで、そのうえで65歳から受給を開始する判断をした場合は勿論それで良いと思います。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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