特許調査において製品分解の情報が必要な場合に利用できるサイト情報
特許調査においてスマートフォンなどの携帯情報端末を対象に調査を行うことがあります。例えば5Gのためにどのような電子デバイスが搭載されているかを知りたい場合があります。
実際に携帯情報端末を購入して分解調査しても良いのですが、そのようなことをしなくても製品の分解調査(ティアダウン)レポートを無償で公開しているサイトがあることが分かりました。本記事では、そのような製品分解調査に関する興味深いサイトについてご紹介いたします。
目次
ティアダウンとは競合製品を分解して自社製品のコストダウンを検討する事
ティアダウンとは、競合製品を分解・分析することにより、自社製品の品質向上やコストダウンなどを進める活動です。競合製品がどのような構造をしているのか、どんな部品を用いているのか、部品点数はどのくらいか、競合製品の原価はどの程度なのか、などについて分析を行うものです。
私も、かつてプリンターの開発を行っていましたので、他社のプリンタを分解して原価の見積もりをしたことがあります。回路基板は電子デバイスの価格が公になっていますから、かなりの精度で推測することができます。機械部品でも、樹脂成型品か、金属板のプレス部品か、などによってある程度推測ができます。
ティアダウンは、後述するリバースエンジニアリングのように電気信号などの解析を行いませんので、機械的な分解調査と言えます。
スマートフォンなどのティアダウン情報が得られるサイトの紹介
先日、スマートフォンに使われている電子部品を調査する必要があり、その際、大変興味深いサイトを見つけました。ご存知の方も多くおられると思いますが、IFIXIT というガジェットの分解のサイトです。
このサイトでは、スマートフォンやタブレットなどを分解した調査結果が公開されています。ボードの写真や電子デバイスの型番も表示されていて、多くの情報が得られます。これらの情報が無料で手に入るというのは本当に驚きです。
例えば、Samsung Galaxy Note 20/Note 20 Ultraの分解レポートがこちらに公開されています。製品の構造を知るには十分に”使える”情報源であり、知っていて得するサイトだと思います。
さらにTopメニューの「修理する権利」というところを見ると、分解情報を公開するのが主目的ではなく、修理しやすさ(リぺアビリティ)に重きを置いていることが分かります。このサイトは、とてもユニークな哲学に基づいていることが分かって非常に興味深いものがあります。
例えば、”エレクトロニクスのリサイクルはエネルギーの無駄”であり、”修理はサステナブルである”と主張しています。”リサイクルは廃棄よりましだが、根本的な解決策にはならない”とも断言しています。
スマートフォンなどのICTデバイスが故障した場合、経済的な理由によりどうしても修理をせずに廃棄&リサイクルしているのが実態です。通常、私たちはリサイクルという処理に何の疑問も持ちませんでしたが、サスティナブルな社会を考えたときには、できるだけ修理して使い続けるのが本来の姿なのでしょう。メーカーで働いてきた自分には考えもしなかったことで、とても新鮮な考え方だとあらためて認識させられました。
ティアダウンとリバースエンジニアリングは異なる
ティアダウンと似たような活動に、リバースエンジニアリング(Reverse engineering)というものがあります。リバースエンジニアリングとは、機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、製品の構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図などの仕様やソースコードなどを調査することになります。
リバースエンジニアリングと知的財産権
リバースエンジニアリングについては、しばしば知的財産権の問題が取り上げられています。競合製品を分解し、その内部構造や動作原理を探るリバースエンジニアリング自体は、原則的には「合法」ということになります。秘密保持契約なしで合法的に入手できる製品・文献・情報について、リバースエンジニアリングを行うことに法的な問題は無いようです。
但し、解析行為で得た情報に基づいて、そのまま真似したクローンを作って商品化することには問題があります。特許権を侵害するおそれは勿論のこと、不正競争防止法に基づく罰則を受ける可能性があります。
ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。
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