EVの特許力で優勢な日本企業が、販売でTESLAの後塵を拝するのは何故か

Electriccar

日経新聞に『EV特許で優位の日本勢、販売不振を脱却できるか』という記事がありました。先日、「EVに関する特許力ではトヨタをはじめとする日本勢が優勢であるが、EVの販売面では米国のTESLA等に負けている」という記事を紹介しました。今回は、何故日本勢よりもTESLAなどの海外のEVが売れるのか、日経新聞の記事を参照しながら考えてみたいと思います。

ニュースの概要 日本勢が多く保有するEV関連特許は販売面で競争優位につながっていない

2020年のEVの販売は世界的に見て好調であり、長期的に見てEVが世界の主流になると考えられています。しかし、このようにEV市場が活況を呈するなか、日本勢は元気がありません。2020年のEV(PHV含む)の世界販売において、日本勢はトップ10に1社も入っていません。

先般ご紹介しましたように、EV特許の競争力は世界で見てトヨタが首位であり、上位50社のうち4割が日本勢が占めているのです。したがって、EV技術力に関して日本企業が劣っているわけでは決してありません。

では何故、日本勢のEV販売が劣勢なのでしょうか? 

記事によれば、企業が持続的な競争優位性を得るには「経営資源」が鍵を握り、経営資源を評価する4つの要素には、①V:Value(経済的な価値)、②R:Rarity (希少性)、③I:Imitability(模倣可能性)、④O:Organization(組織)があるということです。これらの4つの要素は自社の競争優位性を確保するための内部環境として重要なものであり、VRIO分析と称されています。なお、このVRIO分析は1991年にジェイ・B・バーニーが提唱したフレームワークです。

記事によれば、中国、欧州、米国の3大EV市場で、販売首位のメーカーはTESLAであると言います。しかし、TESLAは決して安価ではなく、製品の信頼性も日本車に劣ると言います。それなのに、何故TESLAのEVは最も売れているのでしょうか?

価格や信頼性にマイナス面があるにもかかわらず、TESLAがEV市場で競争優位を構築できているのは、TESLA車に経済的な価値があり、希少性があり、模倣可能性が小さいからだと言います。特に、「TESLAが最優先するのは自社の収益よりも地球環境保護」というTESLAの企業姿勢が模倣困難な「ブランド」になっているからだと言います。

ちなみに、世界2位のフォルクスワーゲンは、欧州市場におけるブランド力と小型車製造のノウハウ、強い販売基盤、ドイツやEUとの政治的なパイプという、希少性があり模倣困難な内部資源を有しているからだと言います。そして、世界4位の中国の上汽通用五菱汽車の競争優位の源泉は、中国市場に適した低価格EVを設計し製造する能力であると言います。

なお、ご紹介した日経新聞社の記事については、こちらをご覧ください。

日本勢がEV市場で勝てる日は来るのか?

記事を読んで感じることは、EV市場はまだこれから成長する市場であり、現時点では、EVの売れ筋には地域性があるのではないかということです。つまり、米国ではTESLAが売れ、欧州ではフォルクスワーゲンが売れ、中国では 上汽通用五菱汽車が売れている、といった具合です。記事では日本市場のことに言及していないので不明ですが、EVが普及するにつれ、日本市場ではトヨタなど日本勢のEVが売れるようになるのではないでしょうか。

日本企業の長年培った技術力はもとより、信頼性、ブランド力は、振興のTESLAや中国のEVに勝るとも劣らないと私は考えます。 技術においては、エネルギー密度が高く、発火のリスクが小さい全固体電池が実用化されれば、多数の関連特許を保有しているトヨタをはじめとする日本企業が、世界のEV市場において競争優位に立てるのではないかと期待しています。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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