【IPランドスケープ】「経営戦略に資する知財情報分析・活用」の紹介

最近話題の「IPランドスケープ」について興味をお持ちではありませんか? IPランドスケープという用語のの定義が色々あって、よくわからない方が多いのではないでしょうか?

特許調査に15年以上携わっている私にも、「IPランドスケープ」とは一体どんなものなのか、実態がよくわからないスキームです。

今般折しも、特許庁からIPランドスケープに関係する報告書が公開されました。本記事では、この報告書「 経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究 」についてご紹介いたします。

目次

特許庁から産業財産権制度問題調査研究に関する調査報告書が公開された

先日、特許庁から産業財産権制度問題調査研究に関する令和2年度の調査報告書が公開されました。特許庁から発行される刊行物・報告書としては、これまで「特許出願技術動向調査」を注視していましたが、「その他の調査、研究」というヘッダーのところに「特許庁産業財産権制度問題調査研究」がありました。

ちなみに、令和2年度の研究テーマとして
(1)オープンイノベーションを促進するための技術分野別契約ガイドライン(AI等)に関する調査研究
(2)AI・IOT技術の時代にふさわしい特許制度の在り方に関する調査研究
(3)今後の国際出願手続のあり方に関する調査研究
(4)大企業等によるオープンイノベーションを促進する知財戦略に関する調査研究
(5)知財人材の流動化に関する調査研究
(6)進歩性判断における予測できない顕著な効果に関する調査研究
(7)経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究
(8)中小企業等知財分析レポートを用いたマッチング調査研究に関する調査研究報告書

が公開されています。どれも興味深いのですが、IPランドスケープに関係する研究テーマである(7)経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究について、要約版を読んでみました。

今回のお題の報告書「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究」の要約版は、こちらです。

当該報告書の要約版を読んで思うこと

IPランドスケープの定義

まず、IPランドスケープの定義が新たに公開されました。
それによりますと、IPランドスケープとは、「経営戦略又は事業戦略の立案に際し、経営・事業情報に知財情報を組み込んだ分析を実施し、その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること」と定義されました。
つまり、①公開されている「市場情報」および「事業情報」と、②非公開の「自社内部情報」および「自社保有他社情報」に、③「知財情報」を組み込んで分析する。そして、その分析結果を経営者・事業責任者と知財部門とで双方向のやり取りが行われることを、IPランドスケープ ということと理解できました。

即ち、経営者および事業責任者と知財部門との間で双方向のやり取りを通じて経営戦略・事業戦略の立案・意思決定に繋げる活動と言えるでしょう。

IPランドスケープの実施状況(アンケート結果)

IPランドスケープの実施状況についてのアンケート(n数=約1500社)結果が公表されていました。

そのアンケート結果によると、約8割の企業等が IPランドスケープ という用語を知っているのですが、その一方で、IPランドスケープ を理解している企業等は約3割しかないこと、さらに IPランドスケープ を十分に実施できている企業は約1割しかないということでした。

この結果は、肌感覚として理解出来る数字です。IPランドスケープ の実施は、まだまだハードルが高いものと思われます。

IPランドスケープのスキーム

資料の IPランドスケープ のスキームを表した図は、大変分かりやすい図であると思いました。
その図によると、IPランドスケープ を可能にする要因が5つ挙げられており、その中の知財部門に関わる要因としては、① IPランドスケープの理解、④ 知財部員のスキル向上、⑤ 情報収集の環境整備 ということが示されています。

その中では、私は ④ の知財部員のスキル向上が特に重要であると考えます。
まず、調査・分析スキルですが、特許情報の調査・分析スキルについては、従来から手慣れているため問題無いだろうと思われます。しかし、市場データや事業データの調査・分析スキルについては、知財部員は経験がないため、これらのスキルを向上させる教育の必要があると思われます。

次に、戦略立案スキル、仮説構築スキルですが、これらについては、相当の梃入れを必要とすると思われます。何故なら、知財部員は特許情報という公開された過去の情報を使って過去を分析する事は慣れていますが、将来を見越した戦略を立案する事は必ずしも得意ではなく、また、仮設を構築して仮説検証していく分析にもなれていないと思われます。戦略立案スキル、仮説構築スキルについては、一般的な知財部員は備えていない素養であると思われます。

戦略立案スキル、仮説構築スキルを備えた知財部員を育成するには、それらのスキルを身に付けている経営企画部門/事業企画部門から人材を異動させるか、知財部の新人を企画部門等に異動させるなどの人事ローテーションを計画的に行わなう必要があると考えます。

最後の情報収集の環境整備については、市場情報/事業情報の収集環境整備が必要でしょう。知財部門では知財情報のデータベースや各種分析ツールは所有しているものの、市場データ/事業データのデータベース、分析ツールは一般的に備えていないからです。企画部門等とデータベース/分析ツールを共用するなどの施策が必要ではないかと思われます。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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