脱炭素と二次電池に関する特許について
最近「脱炭素」という用語を見かけることが多くなりました。「脱炭素」とは、地球温暖化の大きな要因となっている、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を抑えようという運動のことです。
本記事では、特許関連で最近ニュースになった「脱炭素特許、トヨタが出願トップ 総合力はサムスン首位」についてご紹介しています。ニュースのソースはこちらです。
日本経済新聞:「脱炭素特許、トヨタが出願トップ 総合力はサムスン首位」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH10DB4010032021000000/
目次
ニュースの概要
ドイツのパテントサイト社の特許分析ツールを使って、脱炭素に関連する特許を調査分析したところ、出願件数ではトヨタが首位になり、総合力(出願件数と特許の質の関数)ではサムスン電子がトップになったというものです。
”脱炭素特許”の定義は、「気候変動の緩和に直接貢献する技術だけでなく、電気の効率的管理など間接的に貢献する技術」も含まれるということです。具体的には「「風力発電」「燃料電池」「スマートシティー」「電気自動車」「ハイブリット車」「全個体電池」」など50分野の特許が対象に含まれるということです。
「2020年に日本が1位を占めたのは「電気自動車」「ハイブリット車」「全固体電池」の3つ」であり、一方、日本が振るわなかった分野は「スマートシティー」といったスマート関連技術や、「バイオマス」などのバイオ関係ということです。
特許の価値についての考察
パテントサイト社(独)の特許分析ツールを使って描画したバブルチャートは、横軸が特許出願件数を表し、縦軸が「特許の質」を表しています。そしてバブルの大きさが件数と質とを勘案した「特許の総合力」を表しています。
ここで「特許の質」は、他の特許からの引用数などを基に、パテントサイト社独自のロジックで数値化したものと考えられます。特許の価値を数値化した特許分析ツールとしては、日本のパテントリザルト社にもBizCruncher のパテントスコアという同様な指標が存在しています。
「特許の質=価値」が数値化されると特許情報を統計的に処理・分析するうえで、非常に大きなものがあります。近い将来「特許の価値」が安定して各社ばらつき無く測定できるようになることを切望します。おそらく、A.I.を使って今以上に高い精度かつ信頼性の高い「特許の価値」の測定が実現できるようになると考えられます。
二次電池についての考察
”脱炭素” と言えば、電気自動車(EV)が身近な存在ですが、電気自動車の要(かなめ)は、なんといっても二次電池です。そこで”脱炭素特許”の中の ”二次電池” の特許に着目して考えてみます。
欧州特許庁(EPO)と国際エネルギー機関(IEA)の調査によれば、全固体電池を含むリチウムイオン電池関連の特許出願件数は、国別でみると日本がトップということです。また、企業別でみると、最も出願件数が多かったのはサムスンですが、次にパナソニック、LG電子、トヨタの順で続き、出願件数トップ 10社のうち日本企業が7社入っているということです。(出典はこちらです。) 二次電池の特許は、日本の得意分野と言えます。
電気自動車用の二次電池としては、以前から全固体電池が次世代電池として注目されており、トヨタから多数出願されています。その理由は、全固体電池は既存のリチウムイオン電池に比べて、エネルギー密度が高く充電時間の短縮化が期待できるためです。つまり全固体電池は電気自動車向け用途に最適だからです。以前から期待が高い全固体電池ですが、未だ製品化には至っていないようです。電気自動車に早く搭載できるようになることを望みます。
一方、”脱炭素特許”の中の「スマートシティー」に関する特許は、日本は他国と比較して出願が少なく苦手な分野のようです。「スマートシティー」については、特許庁の平成30年度特許出願技術動向調査報告書の第5節にまとめられています。ご興味のある方は確認いただければと思います。こちらです。
ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。
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