技術動向または競合他社動向の把握のために行うSDI調査の実際

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SDIとは? 本記事では毎週発行される特許公報を対象にして行うSDI調査の実施方法について、ご紹介いたします。

目次

SDI調査とは、指定条件に該当する特許情報を定期的にチェックすること

SDI調査とは、関心がある技術分野の最新動向や、競合他社がどんな研究開発に注力しているかなどを定期的にチェックする場合に実施される調査です。特許の検索条件をあらかじめ設定しておいて、その条件に該当する特許情報を定期的(一週間毎)に確認して、最新の技術動向や競合他社の研究開発の変化にいち早く気づくための仕掛けと言えます。

例えば、新商品開発を目的とした研究部門が、当該の技術分野に関する最新の技術動向を把握するために行います。または、自社の競合関係にある他社が新たな製品開発をしている兆しがないか、等を確認するために行います。なお、SDIとは、Selective Dissemination of Information の省略形です。

SDI調査の目的と実際

前述したように、定常監視(SDI)には、最新の技術動向を把握することを目的とするものと、競合他社の動向をキャッチすることを目的とするものなどがあります。以下に、それぞれについて説明します。

最新技術の把握が目的のSDI調査

自社が手掛けていないXYZ事業が最近注目を集めていると仮定しましょう。当該のXYZ事業は市場が急速に成長しているために、多くの企業が競って技術開発をしています。技術開発の速度が速く、次々と新しい方式・新しい技術が開発されていきます。

このような状況下において、自社も後発ながらXYZ事業への参入が決定され、XYZ事業開発チームが発足したと仮定します。

XYZ事業に関する最新技術を把握するために、特許調査を行うのが常套手段です。そこで技術動向調査を行うことになるわけですが、XYZ事業は多様な技術によって成り立っているため、各技術分野ごとに、開発者を割り当ててチームで特許調査を行います。

話を分かりやすくするために、私の経験に基づいて説明します。

私の勤めるM社のQ事業部では、次の事業の柱にするためにJK事業への参入を決定し、私も特許担当としてアサインされました。まず、遡及調査といって、これまで公開されている特許を過去に遡って調査を始めました。最初はJK製品の主要部のエンジンに関する特許公報を調査しました。

JK事業の検討が進むにつれ徐々に開発メンバーが増え、それに伴って特許調査タスクのメンバーも増えました。JK製品に関係する①エンジン技術、②媒体技術、③クリーニング技術、④搬送技術、⑤画像処理技術の5つの特許調査タスクを編成し、特許調査を組織的に行うことになりました。

遡及調査がひと通り済んだ時点で、最新の技術情報を収集するために、SDI調査に移ります。特許公開公報は毎週一回公開されるので、公開された特許をタスクメンバーで手分けして読んでいきます。

技術開発の場合は、担当するユニットが特許分類よりも細分化されているため、取り寄せた公報をSDI担当がタスクメンバーに割り振る必要があります。また、計画的に調査が行われているかフォローする必要があります。したがって、タスク毎にSDI調査を取り纏める担当者を決めると良いでしょう。

タスクチーム内で調査案件を配分する方法としては、機械的に頭割りする方法が簡単ですが、出願人毎に分ける方法もあります。つまり、Aさんは○○社の案件担当、Bさんは△△社の案件担当、Cさんはその他の会社の案件担当、といった具合です。出願人毎に分けると、発明の理解が比較的容易になり調査速度が速くなるという効果が得られます。

そして月に一度、調査結果を持ち寄って情報共有を行う場を設けます。調査をやりっぱなしにせずに、重要な特許が見つかった場合はチームメンバーで情報を共有することが大事です。

自分が担当する技術領域では重要な特許ではないけれども、他のメンバーにとっては、とても重要な特許であるかもしれません。したがって、そういう情報交換の機会にもなり得ます。

もし、SDI調査を行う中で自社の技術を実施する際に邪魔になりそうな特許(重要特許)が見つかったら、どうすれば良いでしょうか?

SDI調査では公開特許が調査対象ですので、その障害になりそうな特許がそのまま登録されることはないかもしれません。審査請求されずに取り下げ擬制となるかもしれません。或いは、登録査定までの審査の過程で補正されて、結果的に自社技術との関連性がなるかもしれません。

重要特許が見つかった場合は、その出願が最終的にどうなるか、登録査定されるか、拒絶査定されるか、知財部に「ウォッチング」をお願いします。その出願について審査請求がされたとき、登録査定されたときに連絡してもらうようにすると、いち早く対応策を検討することができます。

大概の場合は、特許請求の範囲が削除/縮減されて、問題なくなったり、或いは自社の設計が変更になって、その特許に関係する技術を使わずに済むようになったりするものです。

余談ですが、特許調査では ” 抵触 ” という語は禁句です。” 問題特許 ” ” ブラック ” も同様に禁句です。 ” 検討を要する特許 ” とか、” 重要特許 ” という言い方をするのが無難です。

競合他社の動向把握のためのSDI調査

自社製品開発のために行うSDI調査の他に、競合他社の動向をいち早くつかむために行うSDI調査があります。特に、競合他社の技術開発の方向性に何か変化の兆しが見られないか、それをキャッチするために行うSDI調査です。

私の経験をお話しします。依頼者の競合のLN社から業界では画期的な新コンセプトが発表されました。続いて新コンセプトに基づいた新商品のイメージ動画も配信され、業界では注目が集まりました。

しかし、公開されたのはコンセプトだけで、どのような機能がサポートされている新商品なのか、配信された動画だけではわかりませんでした。

そこで、今後明らかになるであろう新商品の機能・仕様を予測するために、特許を調査することになりました。公開公報は週に1回のタイミングで公開されるので、その企業の公開公報を毎週チェックすることにしました。

最初は関連する出願が公開されなかったのですが、3ヶ月ほどするとポツ・ポツと公開され始めました。発明の概要をまとめた速報を報告すると、依頼者に満足していただけました。

その他のSDI調査

その他、研究者個人が自分の研究領域の最新情報を集めるために行うSDI調査があります。上位者から指示されて行うのではなく、自ら行うSDI調査で、特許情報の重要性をよく理解している研究者です。研究者はかくありたいと思います。

以上、SDI調査についてまとめてみました。何らかの参考になれば嬉しいです。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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