IPランドスケープとは知財が主体となり経営に戦略の切り口を提供する活動

最近の知財業界では「IPランドスケープ」が盛んに喧伝されていますが、その実態がよくわからないのではないでしょうか? 本記事では「IPランドスケープ」の定義紹介とIPランドスケープの推進主体等についての考察をご紹介しています。

知財部門が主体となり経営に戦略の切り口を提供する活動

知財の業界では「IPランドスケープ」が最近話題になっていますが、定義が色々あって分かりにくいですね。Wikipediaによれば、IPランドスケープの定義は少なくとも3つありそうです。

1.報告書では IP ランドスケープという用語が出てくるが、これはパテントマップとは異なり、自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すものである。“企業の知財戦略の変化や産業構造変革等に適応した知財人材スキル標準のあり方に関する調査研究報告書”. 日本特許庁. 

2.IPランドスケープ IPはIntellectual Property(知的財産、知財)の略語で、広い意味では、知財を生かした経営を指す。具体的には企業の知財部門が主体となり、自社や他社の知財を中心とした情報を市場での位置づけ、競合関係を含めて統合的に分析し、グラフや模式図を使って経営陣や事業担当者に戦略の切り口を提供する活動をいう。欧米の知財先進企業に定着しており、17年ごろから日本企業にも広がり始めた。“IPランドスケープとは” . 日本経済新聞 電子版

3.IPランドスケープとは、競争優位をつくるために知財情報を有効活用することです。“IPランドスケープの解説記事” . 株式会社如水

引用元 Wikipedia

IPランドスケープの導入を検討している日本企業も多いようです。しかし、海外では「将来を展望した戦略」という意味合いよりも、むしろ、知財全般の概況を把握するためのもの、文字通り「知的財産の風景/俯瞰図」というような広い意味で使われているようです。

このように海外と日本とでは「IPランドスケープ」に対して温度差があるようです。また、定義で気になるところとしては、「企業の知財部門が主体となり、経営陣や事業担当者に戦略の切り口を提供する」という部分です。

知財部門が先頭に立つて、経営陣に提案できるレベルの情報を果たして提供できるのでしょうか。

ご存知のように企業の戦略である「経営戦略」は、ピラミッドのように三層の階層構造からなっています。その頂点には、企業の長期基本戦略である「企業戦略」があり、そして第二の階層には、競争優位を実現するための「事業戦略」があり、そして第三の階層には、経営企画戦略や研究開発戦略などの本社機能に関わる戦略が存在します。知財戦略は研究開発戦略などと同じ階層になり、事業戦略の一部を占めるものと解されます。

IPランドスケープが扱う情報が主に知財に関わる情報であると考えると、経営陣に提案する情報(経営に資する情報)としては不十分であると考えます。知財の情報だけではなく、企業の企画部門が調査分析しているような市場の情報(市場規模・CAGR(年平均成長率)など)や、SWOT分析結果なども必要不可欠であると考えます。

このことから、IPランドスケープを推進するには、企画部門と知財部門が協働する体制、或いは、企画部門の中に知財情報を分析する機能を取り込んだ組織が良いと考えます。いずれにしても、主導は企画部門であると考えます。

もう一点、情報の鮮度に疑問があります。特許情報は出願から1.5年の未公開期間があるため、1.5年以上前の(古い)特許情報を使って分析することになります。それで将来の動向が正確に読めるのだろうかと疑問に思います。まして技術の変遷がますます速くなっている現代にあって、しかも企業の中期計画のスパンは3年間ほどですから、1.5年という期間は無視できない長さでしょう。「振り返ってみると、特許情報の分析結果から現在の状況が予測できていた」と後付けで分析することができても、後の祭りです。

今回は、自身の勉強不足のため、批判気味の記事になってしまいました。「IPランドスケープ」というテーマはあまりに難解なので、後日リサーチして記事を投稿します。


ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。

是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。

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