定常監視(SDI)の進め方
特許調査には、まとめて遡及調査することもありますが、定期的に発行される公報を対象にする特許調査もあります。特に、あらかじめ検索条件を設定しておき、その条件に合致した特許を定期的にチェックする調査を定常監視とかSDI調査と言います。
本記事では、特許調査の仕事の一つ、定常監視(SDI)についてご紹介しています。
目次
SDIとは予め設定された検索条件に該当する特許を定期的に監視すること
定常監視(SDI)とは、検索条件をあらかじめ設定しておいて、その条件に該当する特許情報を定期的に監視することを言います。例えば、技術部門で最新技術の動向を定期的にチェックする必要がある場合や、競合他社の動向を監視する場合に使います。(SDI:Selective Dissemination of Information)
かつて技術部門に在籍し製品開発をしていた時には、当然やるべきものとして定常監視をしていました。通常は、チームを組んで行います。
技術開発の場合は、担当するユニットが特許分類よりも細分化されているため、取り寄せた公報をSDI担当がチームメンバーに割り振る必要があります。また、きちんと調査が行われているかフォローする必要があります。したがって、SDI調査を取り纏める担当者を決めると良いでしょう。
調査案件の配分方法としては、機械的に頭割りする方法が簡単ですが、出願人毎に分ける方法もあります。つまり、Aさんは○○社の案件担当、Bさんは△△社の案件担当、Cさんはその他の会社の案件担当、といった具合です。出願人毎に分けると読みやすくなります。
そして月に一度、調査結果を持ち寄って情報共有を行う場を設けることをおすすめします。調査をやりっぱなしにせずに、重要な特許が見つかった場合はチームメンバーで共有することが大事です。
また、自分の技術領域では重要な特許ではないが、他のメンバーにとっては、とても重要な特許であるかもしれません。したがって、そういう情報交換の機会にもなり得ます。
SDIで見つかった重要特許はその後の審査状況をウォッチングする
もし、定常監視で重要な特許が見つかったら、どうすれば良いでしょうか?
定常監視では直近の公開特許が調査対象ですので、その重要と思われる特許がそのまま登録されることはないかもしれません。審査請求されずに取り下げ擬制となるかもしれません。或いは、登録されても補正されて、重要性が低くなるかもしれません。
重要特許が見つかった場合は、その出願が最終的にどうなるか、知財部に「ウォッチング」を依頼します。その出願について審査請求がされたときに改めて連絡してもらうようにすると良いでしょう。
大概の場合は、特許請求の範囲が削除/減縮されて、重要性が低くなったり、或いは、自社の設計が変更になって、その技術を使わずに済むようになったりするものです。
余談ですが、特許調査では ” 抵触 ” という語は禁句です。” 問題特許 ” ” ブラック ” も同様に禁句です。 ” 検討を要する特許 ” とか、” 重要特許 ” という言い方をするのが無難です。
競合他社の動向把握のために行うSDI
特許調査会社では、依頼を受けて競合他社の最新動向を把握するため定常監視を行いました。状況はこうです。競合のX社から業界では画期的な新コンセプトが発表されました。続いて新コンセプトに基づいた新商品のイメージ動画も配信され、業界では注目が集まりました。
しかし、公開された情報はコンセプトだけで、どのような機能がサポートされている新商品なのか、配信動画だけではわかりません。そこで、今後明らかになるであろう新商品の機能・仕様を予測するために、特許を調査することになりました。公開公報は週に1回のタイミングで公開されるので、その企業の公開公報を毎週チェックすることにしました。
最初は関連する出願が公開されなかったのですが、3ヶ月ほどするとポツ・ポツと関係する特許が公開され始め、それらの発明の概要をまとめた速報を依頼元に報告し、成果を上げることができました。
ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。
是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いします。