先行文献調査とは?/調査の手順は?
「先行文献調査」をご存知でしょうか? 研究・技術者(発明者)にとって最も身近な特許調査になります。「出願前調査」とも呼ばれ、特許出願が簡単に拒絶されないように、同じ発明が出願されていないか否かをあらかじめ調べるために行われる特許調査です。
本記事では、この先行文献調査とはどんな調査なのか?また、先行文献調査の手順について私の経験をもとに記載しています。
目次
先行文献調査とは、出願予定の発明が公知になっていないか否かの調査
先行文献調査は、出願前調査とも言われますが、無駄な出願を防止するために行われる特許調査です。出願しようとしている発明と同じ技術思想が、既に公開されて公知になっていないか否かを調査します。調査範囲は、技術分野によりますが、最近の公開公報を中心に調査を行います。調査漏れを気にしすぎるよりも出願日を確保するため、調査は迅速に行うことが重要です。
調査結果によっては、費用の無駄を考えて出願を断念せざる得ない場合や、請求の範囲の絞り込みをする際の貴重な判断材料となり得ます。
先行文献調査の範囲は、最初は日本国内の公開公報で
本来ならば海外の特許も調査対象に入れるべきでしょうが、一般的には国内の公開公報(特許だけだなく実用新案を含む)で十分でしょう。この先行技術調査の性格として、調査漏れがある程度許容されます。つまり、「出願しようとする発明と同じ技術思想が書いてある先行技術文献は、世界中に絶対ありません!」という高いレベルの調査結果は求められていません。
国内で先行文献が見つからない場合は、米国特許や欧州特許を調べる場合もありますが、ごく稀なケースと言えます。
調査母集団は、特許分類を主にキーワードで絞り込んで作成する。
まず最初に特許検索式を設計し調査対象の母集団を作成することから、調査を始めることになります。発明者が母集合を作れれば理想的ですが、発明者が特許分類を使った検索式を設計することは難しいことが多く、キーワードに頼った検索式になりがちです。その結果、調査の漏れが生じやすいことになります。そのため、知財部員が検索式を設計し母集合を作って技術者/発明者をサポートできると好ましいでしょう。
最近の傾向として、「概念検索」の機能を使って母集団を作る選択肢も注目されています。これは、出願しようとする発明を文章化して、その文章を基に言語解析して検索するものです。今後、検索ツールの機能/性能が向上すると、特許分類を使った検索と同等の質の母集団が得られるようになるかもしれません。
調査すべき公報件数は、一般的には300件程度が適当
調査母集団が作成できたとして、さて、公報は何件くらい読めば良いでしょうか?一概に「何件読めば大丈夫」とは言えませんが、経験的に最低300件くらいは目を通した方が良いでしょう。私の場合は300件~600件くらいの集合に目を通しています。
300件~600件読んでみて、自分の発明と同じものや近いものが無ければ、出願しても簡単に拒絶されることは少ないでしょう。
明細書に先行技術文献情報を記載することが必要
特許法に先行技術文献情報開示要件(特許法第 36 条第 4 項第 2 号)というものがあります。そのため、先行技術調査を行う中で、出願しようとする発明に比較的近い先行技術文献が見つかった場合は、その文献を先行技術文献情報として明細書の中に記載しなければなりません。
そのため、明細書に【先行技術文献】を記載するため、および、発明者がきちんと先行技術調査を行ったかどうかを確認するために、発明者に対して「特許調査した中で自分の発明と近いと思われる公報を3件挙げてください」と依頼すると良いでしょう。
先行文献調査の手順
先行文献調査をどのように進めるか?については、次回の投稿にしたいと思います。申し訳ありませんが、宜しくお願いいたします。
ここまで読んでいただき、どうも有難うございました。
是非、また、当ブログを読んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。