リチウムイオン電池は何故発火する?
カーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)の実現に向けて、自動車の電動化が急速に進んでいます。EV車のコストの多くを占めるのはバッテリーですが、このリチウムイオン電池は発火しやすいという懸念があります。リチウムイオン電池が使用されているのはEVだけではなく、スマートフォンやノートパソコン、モバイルバッテリーに使用されているのはご存知の通りですが、モバイルバッテリーの発煙・発火事故はよく聞きます。
本記事では、リチウムイオン電池の発煙・発火について調べてみましたのでご紹介します。
目次
リチウムイオン電池の発煙・発火事故はどのくらい起こっているか?
リチウムイオン電池に関係する火災がどのくらい発生しているのでしょうか? 東京消防庁のサイトに「リチウムイオン電池関連火災状況」が公開されています。(引用元はこちらです)
これによると 令和元年に東京消防庁管内で発生したリチウムイオン電池が関係する火災は102件あったということです。ほとんどの場合、「ぼや」で済んでいますが、建物が全焼/半焼したケースがあるのが驚きです。また、発生件数が年々増加傾向にあるのが気がかりです。
更に、モバイルバッテリー、ノートPC、携帯電話・・・等々の製品別に整理された表も公開されています。これによると、モバイルバッテリーの件数が多いようです。確かに、モバイルバッテリーの発火・発煙事故というのはよく耳にする気がします。
以上の火災発生件数は東京消防庁が把握している火災件数ですが、「ぼや」に至る前の、製品の異常な発熱や発煙/発火の発生件数は更に多くあるものと推測されます。
リチウムイオン電池が発煙・発火しやすい原因は?
リチウムイオン電池の異常発熱の多くは、短絡(ショート)が原因といえます。短絡すると瞬間的に大きな電流が流れて激しい熱が発生します。短絡する原因の代表的なものに外部衝撃によるものがあります。即ち、電池に何かが突き刺ささったり、押しつぶされて電池の中の構造が破壊されるような衝撃が加わると、正極と負極がつながり短絡の状態が生じます。
電池セルの不具合による内部短絡
外部衝撃に因る短絡の他に、異物混入などの電池セルの不具合が原因になることもあります。(引用元はこちらです)
このような短絡が起因となって、「熱暴走」という「発熱がさらなる発熱を招く」とい現象が起こります。「熱暴走」とは、リチウムイオン蓄電池が充放電する際に発生する熱が、制御不能の状態になってしまう現象のことです。リチウムイオン蓄電池が熱暴走を引き起こすと、異常な発熱・温度上昇が続く状態に陥り、最悪の場合は発火や火災といった事故にまで発展してしまいます。
リチウムイオン電池セルの熱暴走
リチウムイオン電池の熱暴走とは、「リチウムイオン電池セルにおいて,発熱が更なる発熱を招くという正のフィードバックによって,温度の制御ができなくなる現象,またはその状態」を言います。下に示した図をみると良く分かります。これは、製品安全センターの資料から引用させていただきました。(引用元は、こちらです)
正極材によっては熱暴走を防ぐことができる
従来のコバルト系の正極材(LiCoO2)は、上記のように熱暴走しやすい状態になりますが、酸化鉄リチウムイオン電池(正極材がLFPO)では、熱暴走が起こりにくいということです。下に参考資料を載せておきます。(引用元はこちらです)
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